EU非OECD向け廃棄物輸出の認可制度と修理経済への影響
ニュースの概要
EUが、OECD(経済協力開発機構)に加盟していない国への非有害廃棄物の輸出について、認可制度を設ける方向で意見公募を始めました。これまでEUは、プラスチックくずや古紙、金属くずなどを比較的自由に域外へ送り出してきました。しかし輸出先で不適切に処理され、海や川の汚染につながる例が相次いでいます。新制度では、輸出先が環境上適正に処理できる施設を持つと確認された事業者だけが、EUから廃棄物を受け取れる仕組みが想定されています。今回の公募は、その運用の細部を詰める段階です。対象品目や審査の基準、手続きの重さが論点になります。リサイクル業界だけでなく、中古品や部品を扱う事業者にも無関係ではありません。
引用元: EU、非OECD諸国向け非有害廃棄物輸出の認可制度で意見公募開始(Circular Economy Hub)
分析・見解
廃棄物を送り出して済ませる時代の終わり
EUは長く、自域内で出た廃棄物の一部を、処理コストの安い国へ送ってきました。2018年に中国が廃プラスチックの輸入を事実上止めると、行き先は東南アジアやトルコへ移りました。その結果、マレーシアやインドネシアでは違法な野焼きや不法投棄が表面化しました。今回の認可制度は、この流れに対するEU側の答えです。「出したあとは先方の責任」という考え方を改め、出した側にも結果への責任を負わせる動きだといえます。
なお、有害廃棄物はすでにバーゼル条約(=有害廃棄物の国境を越える移動を規制する国際条約)で管理されています。今回は、これまで比較的ゆるかった非有害の側に網をかける点が新しい部分です。
線引きがあいまいなのは、廃棄物と中古品の境目
この制度で最も揉めやすいのは、何を廃棄物と見なすかという問題です。たとえば壊れたスマートフォンを大量に積んだコンテナは、現地で修理して売るなら「中古品」です。部品を取って残りを捨てるなら「廃棄物」と見られかねません。実際、アフリカ向けの中古家電や中古車の輸出では、動くはずの品が現地で動かず、事実上のごみ輸出になっていた例が繰り返し指摘されてきました。
EUの規則には、輸出する品が動作することを示す書類の基準がすでにあります。ただ運用は国ごとに差があります。認可制度が入れば、この判定をそろえる圧力が強まるはずです。
修理経済にとっては逆風にも追い風にもなる
修理や再利用を事業にする側から見ると、影響は二方向に出ます。逆風は、途上国の修理業者へ部品や不具合品を送る取引が、書類負担と審査待ちで細ることです。小さな事業者ほど手続きに耐えられません。
追い風は、域内での修理や再生の価値が上がることです。輸出という安い出口が狭まれば、廃棄の手前で直して使う選択肢の採算が改善します。EUの修理する権利の議論と合わせて見ると、「直して域内で使い切る」方向へ政策が一本につながりつつあります。
日本の事業者が見落としやすい波及経路
日本企業はEUに直接廃棄物を出していなくても、影響を受けます。EU向けに製品を売る企業は、使用済みになった製品の回収と処理の道筋を示すよう求められる場面が増えるからです。さらに、EUの基準は他地域の規制の見本になりやすい性質があります。過去にも化学物質規制や電池規則が、数年遅れで各国に広がりました。非OECD諸国向けの輸出ルールも、同じ経路をたどる可能性があります。今回の意見公募の中身は、数年先の世界標準の予告編として読むのが現実的です。
ビジネスへの影響
輸出ルートの棚卸しを今のうちに済ませる
まず、自社や取引先が、使用済み品や不具合品をどこへ送っているかを一覧にしてください。送り先がOECD非加盟国で、品目が中古品か廃棄物か判断しにくいものは、優先して点検する対象です。輸出時に、動作確認の記録、梱包状態、受け取り側の事業者情報を残す運用を始めれば、新制度が始まっても大きく慌てずに済みます。書類は後から作るより、日々の業務の中で残すほうがはるかに安く済みます。
修理と再生を前提にした調達と販売へ寄せる
輸出という出口が狭まる前提で、事業を組み直す手もあります。自社製品の修理しやすさを上げる、部品を長く供給する、回収した製品を域内で再生して売る、といった選択です。EUの再生品需要は、規制の後押しもあって伸びています。スマートフォンや家具、衣類の修理事業と組む形なら、廃棄物を減らしながら新しい収益源も作れます。
公募の動きを追い、自社の意見を出す選択肢
EUの意見公募は、域外の事業者も参加できる場合が多くあります。自社の品目が不当に重い手続きの対象になりそうなら、業界団体を通じて意見を出すことも可能です。規則が固まってから対応するより、設計段階で実務の声を届けたほうが、結果として負担を軽くできます。担当者を一人決め、公募の期限と最終案の公表時期を定期的に確認する体制を作っておくと安心です。