EUの修理する権利が7月に適用開始、日本企業が今から備える修理体制の見直し
ニュースの概要
欧州連合(EU)で2026年7月、修理する権利に関する指令が各国の国内法として適用され始めた。メーカーは、保証期間が過ぎた対象製品でも、合理的な価格で修理に応じる義務を負う。部品や修理情報の提供、純正以外の部品や第三者修理を理由にした修理拒否の禁止も柱である。消費者が交換でなく修理を選べば、法定保証が12か月延びる点も特徴だ。MIRASUSの記事は、この制度で欧州の何が変わったのかを数字で整理し、日本との違いを読み解いている。本稿ではその違いを踏まえ、日本の事業者にとっての意味を考える。
引用元: 修理する権利は欧州で何が変わったのか|2026年7月適用のEU指令と日本との違いを数字で読む(MIRASUS(ミラサス))
分析・見解
捨てるより直す方が得になる価格設計へ
従来、修理は「新品を買う方が安い」という計算に負けてきた。指令は、この力関係を変えにかかる。メーカーは対象製品について、合理的な価格での修理を求められる。部品の供給を絞ったり、修理を妨げる契約条項やソフトの制限を設けたりすることも許されない。
さらに、消費者が修理を選ぶと法定保証が12か月延びる。直せば保証も延びるので、修理を選ぶ動機が価格以外にも生まれる。これまで修理に消極的だった販売店にとっても、損得の見え方が変わる。
独立系修理業者に門戸を開いたことが最大の変化
最も大きいのは、メーカーの外にいる修理業者の扱いだ。純正でない部品や、他社による過去の修理を理由に修理を断ることは禁じられる。これまで大手が囲い込んできた修理市場が、町の修理店にも開かれる。
また、修理業者を探せる各国のオンライン窓口や、修理条件を事前に示す統一の様式も用意される。価格と所要日数が見えれば、利用者は比べて選べる。市場に競争が生まれ、料金は下がりやすくなる。
日本は法律でなく企業の判断で進んできた
日本には、修理を包括的に義務づける法律はない。部品を何年保有するかは、業界の慣行や企業ごとの方針に委ねられてきた。メーカーが善意で続けても、どこまで供給するかは企業次第である。
EUは「お願い」から「義務」へ切り替えた。この差は、消費者の安心感と、修理業者の事業計画の立てやすさに直結する。部品が確実に手に入ると分かれば、修理業者は設備や人材に投資できる。
見落とされがちな視点は、修理が事実上の輸出条件になること
独自の視点として、この指令は欧州に売る日本メーカーにとって、事実上の輸出条件になる点を挙げたい。EU向けに修理体制を整えれば、その仕組みは国内にも転用できる。別々に運用するより、共通化した方が費用は下がる。
環境規制は、一度ある地域で厳しくなると、世界の標準に近づく傾向がある。電池を交換しやすくする欧州の設計規制が、すでにスマートフォンの作りを変えつつあることが好例だ。後から追う側は、先に動いた企業より高い対応費を払うことになる。
ビジネスへの影響
対象製品の修理可否を一覧にして点検する
まず自社製品のうち、EUの対象品目に当たるものを洗い出す。洗濯機、冷蔵庫、掃除機、スマートフォン、ディスプレイなどが挙がる。次に、製品ごとに部品の入手期間、修理手順書の有無、修理にかかる日数を確認する。ここに空白があれば、欧州では販売の障害になりうる。担当は設計、品質、サービスの三部門にまたがるため、早めに合同で棚卸しを始めたい。
修理を費用でなく収益源として組み立て直す
修理は赤字の後始末と見られがちだ。しかし、保証延長、部品販売、修理予約の手数料まで含めれば、顧客との接点はむしろ増える。再生品の販売や下取りと組み合わせる企業も出ている。
中小の修理業者にとっては、メーカーから部品や資料を得やすくなることが追い風となる。提携の打診は早いほどよい。メーカー側も、自社で拠点を増やさずに修理網を広げられる。
日本国内でも先回りして備える意味
国内に法的義務がなくても、備える価値は大きい。物価高で長く使いたい需要は強く、修理の見積りを事前に示すだけで信頼は上がる。まず一品目で、価格表と所要日数の公開を試すとよい。小さく始めて数値を取り、効果が出たら他の品目に広げる進め方が現実的だ。